43%からのまなざし  限界集落日誌

 1200人程の集落に6人いる町内会長の1人となって2年目も半ばを過ぎた。もとより、なりたくてなった訳ではない。中学の時、1学年上だった先任町内会長Sさんのご指名だ。Sさん自身も前任の町内会長が後任を決められないまま、3年目に突入するのを見兼ねて引き受けたのだった。自分も後任を決めることができないまま、輪番で回ってくる連合町内会長となってしまった。 
 かつては漁業で栄え、2600人の人口があったというこの集落は、多くの漁村のように、海岸から山が立ち上がり、その山にへばりつくように家が密集する地域だ。若者の多くは住みたがらない。同じ市内に住む者も、新興住宅地に家を建てる。そのため集落全体が若く経済力がある時代に始められたお祭りが負担なのだ。お神輿を担ぐ人がいないのに加えて、1軒1軒が負担する祭典費用が大きい。何とか変えなければと思う反面、集落の人々の思いは様々であり、変革にも体力がいる。
 お神輿を担ぐための人集めの見通しを立てるために、集落の人口構成を調べてみると43%という数字に行き当たった。この集落は65歳以上の住民が43%を占めている。財政破綻した北海道の夕張市の年齢構成と同じ43%なんだと思っていたら、少し前の新聞に2035年に日本の65歳以上の年齢構成は43%となるとの記事があった。地方の田舎の集落の直面する問題には誰も関心を持たないが、規模はだいぶ違うものの、この集落が抱える問題は、25年後の日本の問題だと気がついた。
 この地域の人々の生活単位は実に多様だ。80歳以上で一人暮らしのオバさんもいれば、オジさんと娘、孫の3人暮らしの家もある。オジさんが亡くなった奥さんの母親やお姉さんの面倒をみている家もある。標準家族世帯の想定が当てはまるお宅はほとんどない。最近2回行われた地方選挙で、ここの集落の投票率があがった。候補者がどうの政策がどうのという問題ではない。エレベーターのない3階建てのビルの3階にある集会所から、廃業した干物屋さんの一階の作業所跡に投票所が変更されたからである。こうした変更をするのに10年かかった。今晩は教育委員会に動員をかけられており、青少年補導委員として夜の見回りに行かなければならない。でも若者はどこにもいない。さぼりたいのだが、同じく動員をかけられているマジメな先輩への義理もあり、NOというほど元気はない。おそらく何らかの予算と計画があって動員をかけられているのだが、こうしたことの意味と現実に、どれだけの政治家が気が付いているのか、聞いてみたい気がする。