事実の捏造も平和を破壊する

 キューバと米国が国交を回復し相互に大使館を開くという。54年ぶりだそうだ。オバマ大統領は、議会に対し、キューバへの経済制裁解除を訴えたという。今後は、共和党が多数を占める米国議会での議論が焦点となるという。「日米の和解と希望の同盟としたい」と訴えた安倍首相の米国議会演説の価値を正しく評価するためには、米国の歴史を知る必要がある。
  よくに12月8日の真珠湾攻撃による日米開戦とともに、「リメンバー・ザ・パールハーバー」という言葉を聞くが、「リメンバー・ザ・メイン」という言葉を聞いたことのある日本人は少ないのではないか。1898年2月、キューバ独立運動を支援するために、ハバナ港に停泊していた米国海軍の新鋭戦艦メイン号が謎の爆発を起こし354人の乗組員のうち266人がなくなった事件である。
 米国は、当初冷静だったと言われるが、新聞が国民感情に火をつけた。スペインが仕掛けた水雷による爆沈だとして決めつけスペインとの開戦を主張し、部数拡大のために事実の裏付けのない記事を載せていたのが、ハースト系のジャーナル紙とピューリッツァーのワールド紙だった。ピューリッツァー賞のピューリッツァーである。そして米西戦争が起こり、キューバプエルトリコの支配権を手に入れ、グアムとフィリピンを手に入れたその過程で、ハワイを併合したのである。「言論の自由」も大事だが、「事実の捏造も平和を破壊する」のである。そしてキューバの独立派は、新興大国に裏切られたのだった。
 それから半世紀がたち、1952年、25才の青年弁護士だったカストロが、米国の支持を背景にクーデタで成立したバティスタ政権を社会保安法違反で告発し、それに裁判所が応えないことがわかって、武力で政権打倒を決意したところからキューバ革命が始まった。バティスタは米国に亡命し、1959年1月カストロハバナ入城でキューバ革命はなり、米国もこれを承認した。キューバと米国の関係が破綻した切っ掛けとなったのが、4か月後の農地改革法だった。大農園、大企業から土地を買い上げ、耕す者に土地を与えた。大部分が米国企業の土地だった。米国は報復としてキューバの砂糖を買わないと脅しをかけたが、そこに割って入ったのが当時のソ連だった。砂糖を大量に買い付けると共に、ソ連さんの原油を安価に販売した。米国系の精製会社に石油精製を頼むと米国政府が拒否させた。これに対抗してキューバ政府が米国企業を国有化し、米国が経済制裁をし、1961年1月国交断絶したのだった。
 ラムをコカ・コーラで割った「クーバ・リブレ」(自由キューバ)やダイキリは知っていたが、モヒートは最近まで知らなかった。でも飲むならストレートが良い。