沖縄の政治環境

 本題に入る前に、最近報じられた気になる記事のことを転記しておく。米国国防総省は、開発中の最新鋭ステルス戦闘機F35のエンジン部品に亀裂が見つかったため、全機の試験飛行を一時停止すると発表した。(その後3月1日に飛行再開)
 試験評価局は1月に公表した報告書で、空軍型の主翼とエンジン部分、海兵隊型の機種部分に亀裂が発生していると指摘していた。日本は、同機を次期主力戦闘機と位置づけているが、開発の遅れと価格高騰で、各国の発注数の削減や見直しが続いている。
このまま行くと、つなぎの機種の選定や既存戦闘機の大幅改修による延命プロジェクトが必要かもしれない。空中警戒機の改修も必要だとされているようだ。今までの防衛費削減のしわ寄せが来ているのだろう。
 気の毒なことだが、タイの軍事演習に参加していた海兵隊普天間基地所属ヘリコプターCH-46が緊急着陸後に炎上し負傷者が出たという。エンジントラブルによる緊急着陸だという。沖縄でなくて良かったというのが正直な感想だった。
  1.日米首脳会談後の日本の政治
  2.尖閣諸島と沖縄を守るための防衛
  3.中国における「流動人口」の増大
  4.沖縄の複雑な政治環境

1.日米会談後の日本の政治
 安倍首相の米国訪問と日米首脳会談は、通常の内閣では考えられないほどの政策の進展をコミットしたと考える。しかし個人的には米国側の扱いはかなり冷淡だったと思う。
 メディアはほとんど報じないが、中国・韓国の反日ロビー活動が米国で予想以上に活発に展開されているようだ。どういう反日宣伝が行なわれているかをメディアはもっと報じるべきと思う。
 共産党独裁の国家で現実に異民族を弾圧し他国を侵略している軍事国家が日本の右傾化を非難している。世界の風俗産業に10万人とも言われる女性を送りだしている国が慰安婦問題で日本を非難している。
 非難されていることは事実ではないことはハッキリしているが、きちんと情理を踏まえて自己主張しないこと自体が無責任だというのが世界の現実だ。それは政治の直接的な役割ではない。米国の世論調査で米国民の6割が日本人を信頼していることに力づけられる。
午後からの戦略国際問題研究所での安倍首相の演説は、「日本は二流国家にはならない。・・・強い日本を取り戻す。・・・私の国を頼りにし続けてほしい」というものだったらしい。国際問題の専門家の多い会場が、大きな拍手に包まれたことが救いだった。後は実績で米国の信頼を取戻すしかないのだろう。
 2月26日、2012年度補正予算参議院でも1票差で可決され、当初見込まれていた衆議院での再議決をしなくても予算が成立した。民主党参議院での2人の離党もあったが、複数の少数政党と無所属の議員の賛成があった。わずか1票であるが大きな転換点だ。
 参議院の最大会派である民主党と、キャスチングボートを握る作戦だった「みんなの党」に与えた影響は特に大きかったと思われる。政権への信頼感の高まり、国民の間での支持率上昇を反映している。内閣支持率はどの調査でも7割を超えた。政党支持率でも4割を越え始めた。
 帰国後の動きは補正予算のほかにも急である。経済政策の要のひとつとされる次の日銀の総裁・副総裁が決まりそうだ。総裁にはアジア開銀総裁の黒田東彦氏、学習院岩田規久男先生は副総裁だという。
 TPP交渉への参加も既に与党からの了解を取り付けた。これは鮮やかだった。民主党は何度か首相が参加を表明しても、党内での了解を最後まで取り付けることができなかった。
 普天間基地移転の問題では、沖縄県に埋立申請はまだ出されて無いものの、名護の漁協の同意がとれそうだ。
 老練な仲井眞知事は、県議会の予算提案で、県外移設に努力すると演説したようだ。前回の県知事選挙で勝つための公約なのだから当然だろう。高良先生を含む2人の新副知事の議案も上程された。県知事と並んで県政に大きな影響力をもつとされる那覇市長の動きが注目されている。ここしばらく沖縄の動きから少し眼が離せない。
2.尖閣諸島と沖縄を守るための防衛
 尖閣諸島と沖縄を守るために何をすべきかという観点で、自衛隊将官OBの意見を幾つか読んだが、その方策は概ね一致している。個人的には、空母の保有を除いては予想通りだった。急には準備できないだけに検討をはじめるべきかもしれない。防衛原則どおり、空母に対抗するには、空母しか無いのもかもしれない。
 まず防衛予算を大幅に増加させ領土を守るという我が国の決意を中国に伝えること。中国が2020年までに4隻の空母を就航させるので、将来は尖閣周辺空域の航空優勢は保てないかもしれない。空母が必要なのかもしれない。尖閣周辺で、訓練、演習を頻繁に実施して、海上自衛隊石垣島宮古島に頻繁に寄港して、航空自衛隊の戦闘機は下地島空港に頻繁に機動展開訓練を実施することが必要だという。尖閣以外の沖縄の離島を使って島嶼防衛訓練を日常的に行なうことが、中国の不法行動をやりにくくする。石垣島宮古島与那国島には陸上自衛隊を配備し、艦艇が寄港出来る港湾施設を整備し下地島空港の航空基地化を図る。さらに地対空ミサイルや対空機関砲なども配備して要塞化することが必要らしい。
 集団的自衛権の行使も含めた法的枠組みの強化も必要だと言われて久しい。国際標準にあわせて、武器の使用は、現場の兵士が危険と感ずればいつでも可能な権限を持たせるべきではないか。
 在日米軍基地の75%が沖縄に集中しているというが、分母には佐世保、横須賀、厚木、岩国等の巨大な米軍基地は含まれていない。それらの基地は一部自衛隊と共用になっているからだそうだ。また普天間基地は世界で一番危ないというのが枕詞になっているが、そうではないという声もある。沖縄国際大学やいつも取材される小学校は、基地のあとからできたという。沖縄県の陸地面積は全国面積の0.6%にすぎないが、尖閣諸島を含む150余の島嶼に所属する排他的経済水域は本州ほどの面積に匹敵することにも配慮したい。
3.中国における「流動人口」の増大
 中国国内では、習近平氏は、今、次のような批判を浴びているという。尖閣での強硬路線によって、日本は、正々堂々と右傾化し軍事費を増大させ国防軍への改変を口にしている。尖閣戦争の準備をせよなどと言って軍事路線に血道を上げるうちに、経済は猛烈な勢いで縮小してしまい、ASEANは中国に背中を向け、香港は高度な自治を要求し、台湾では独立運動が復活する。実際、官製の反日暴動のあった2012年9月より、経済動向指数とされている鉄道輸送量の前年同期比が落ち込んでいるという。水不足と大気汚染の著しさは世界に知れ渡った。
 11月の習近平政権発足後も国内における大規模な暴動事件が多発している。警察自体による暴力沙汰や汚職も、暴動発生の原因となっているという。2011年末の時点で中国全国の流動人口は、2.3億人に達したという。その8割は農村戸籍で平均年齢は28歳だという。「流動人口」は、安定した生活基盤を持たずにして、職場と住居を転々する人をいうらしい。世界的経済不況と中国国内の生産コストの上昇で中国の対外輸出は減速し、公共事業投資が激減している。外資の流出が効いているようだ。
 現在の「農民工」は既に生まれたときから都市部で育ち、農村に帰っても耕す農地がなく農作業のことは何も分からない。行き場を失った流民の暴発は、いつの王朝崩壊の引き金となる。貧富の差も世界一であり、共産党による独裁というよりは支那の伝統的な貴族と官僚の社会の在り様と似ている。
 対外的な強硬政策を推し進めることによって国民の目を外に向かわせようとしている。既にチベットやウィグルの食糧不足が報じられている。北朝鮮の食料も当然不足するだろう。様々な同時多発的な危機に我々は対処できるのだろうか。危機に当たって北朝鮮拉致被害者の人々を救出する算段はできているのだろうか。
4.沖縄の複雑な政治環境
 沖縄の政治に関心をもってしばらく経つ。時に理解できない複雑な動きがあるが、沖縄の複雑な政治環境の現時点での理解をまとめてみたい。
 沖縄の政治勢力グループは、特産の砂糖の種類にたとえて、歴史的には白糖、黒糖、支那糖があるとされていた。その伝でいくと今は種類も増えて、薩摩糖、共産糖、半糖(朝鮮半島)、新左翼糖も追加すべきかもしれない。また社会的には、門中(一族同門)意識が比較的に強く、那覇を中心とする2大地方新聞と自治労と沖縄教職員組合(沖教組)の組織力が強い。選挙活動のほとんどの仕事は組織作りとされているので、政治力が強いこととほぼ同義である。大きな企業が無い地方都市と似ている政治環境である。
 沖縄本島を中心に2大新聞は「オスプレイ配備阻止」「普天間移設反対」を主導している。この運動の中心になっているのが、県都であり、人口32万人の那覇市翁長雄志市長だといわれている。2012年9月に開催された「オスプレイ配備反対県民大会」の共同代表だった。市町村長は安全統計が理解できない人ばかりだとはとても思えないので、何か別の政治的意図があると考えられているが、よく判らない。
 翁長さんは、那覇市議と沖縄県議を2期ずつ務め、市長4期目の重鎮だ。かつて自民党沖縄県連幹事長として、普天間飛行場の県内移設を推進していたが、今は「安全保障は日本全体で考えるべきだ」と県内移設反対に転じ、前回の知事選において仲井眞知事の選対本部長として県内移設反対への翻意を迫った人だといわれている。翁長氏は沖縄県の市長会会長であり、保革を超えた「オール沖縄」を形成できる人だとも言われているようだ。ただ2013年1月の浦添市長選挙の結果は興味深かった。那覇市長の主導するオール沖縄が支援した候補が無名の新人に敗れた。計画されている岸壁の再配置の行方が微妙になった。誰が何を決めるべきかハッキリしないという意味で、普天間飛行場の問題と二重写しに見えてくる。オール沖縄だからといって必ずしも無敵ではないことが証明されてしまった。
 辺野古への埋立申請から、知事判断までには7カ月から1年かかるという。2013年の7月には参議院選挙があり、2014年1月には移設先の名護市の市長選挙がある。ちょうどその2014年1月に着工されるのが那覇空港の第二滑走路である。2019年末の工事完了だという。結びつけるわけではないが、北部と中南部の差がハッキリすることになるのは避けられない。沖縄は、県民一人当たりの所得や税収は全国最下位クラスだが、その穴埋めを他県にはない一括交付金で穴埋めしているのは事実である。仲井眞知事の判断が注目される。
 2014年の11月には県知事選挙が行なわれる。75歳となる仲井眞氏が再度出馬するのか、那覇市長が転出されるか、第三の候補が出てくるのかはわからない。
 沖縄の経済や言論に大きな影響力があるとされる中国系日本人の先祖は福建省の出身だといわれ、その縁もあって台湾や福建省との交流が盛んである。一方、中国の習近平主席は、福建省の時代から台湾・沖縄工作を担当していたことは良く知られている。若い頃から何度か沖縄にも来たことがあるようだ。明治時代の沖縄には、やはり沖縄独立論を唱える人たちがいて、琉球処分の際には清朝へ助けを求めにいった人もいたことは歴史的事実である。
 今も中国には琉球独立運動を援助する組織があることが知られている。日本としては、沖縄の防衛体制を強化するとともに、守りのインテリジェンスを固めるべき地域でもある。沖縄には、最近、日本の永住権や日本国籍を取得した中国系の人が増えているといわれている。また米軍基地の底地も既に1割以上を中国系の人が取得していることが最近話題になった。