時論 2016年6月

 英国がEU離脱を決めた。英国のことばかりメディアは報じているが、忘れてはならないのが、EUの事実上の盟主であるドイツのドイツ銀行自体が中国経済にお金を貸しすぎて危機にあることだ。
 報道管制がひかれているが、中国経済の投資過剰と混乱は明らかだ。数万人規模のゴーストタウンを国内だけでなくアフリカにまで作っている。世界各地での中国新幹線計画の破たんが報じられている。中国の鉄鋼生産設備は、国内需要を除いても4億トン過剰だという。日本の粗鋼生産量が各社合わせて年間1億トンなので、その規模は想像を絶する。そうした製鉄所のための鉄鉱石と石炭を買ってもらっていたオーストラリアに親中派が多くても不思議はない。
 安全保障に目を移せば、中国は、国内の矛盾から目をそらすために南シナ海東シナ海、インド国境と各地で武力衝突を求めているように見える。それはこれから暫く続くだろう。「航行の自由」作戦にヨーロッパも参加をと主張したのはフランスだったと思う。南太平洋の仏領タヒチニューカレドニアが心配なのだろう。あまり知られてないが銅鉱山があり仏海軍が駐在している。
 ロシアの極東地域でも中国人が農地を求めて進出していて、人口希薄なロシアは脅威を感じているはずだ。日本がロシアのシベリア・極東開発に協力する中で、北方領土問題が解決され平和条約が締結されれば、ルトワック先生、ミアシャイマー先生ならずとも「日本はやるべきことを着実に実行している」と見る人もあるだろう。
 個人的にはシベリア鉄道を延伸し、宗谷トンネルを作り、旭川・苫小牧と引いて来れば、大きな経済効果があると思う。ガスのパイプラインを引ければ、その分のコストダウンだけでなく、釣り上げられていた中東諸国からのエネルギー調達コストを引き下げることになるだろう。
 様々な国々と平和的に交流を深めることには大賛成だが、相手に喧嘩を仕掛けられないだけの抑止力を持つべきと考える。信頼醸成措置や話し合いましょうといっても相手がいうことを聞かない。
 安全保障の観点から見れば、防衛的な行動を支える法律に不備があり、立法府の怠慢が続いている。また内政を見ても時々奇異なことが起こる。ヘイトスピーチ解消法は理念法だと説明されていたが、拡大解釈されて言論が事前に弾圧される事態となった。都知事はやめたが、今でも定員未達の韓国学校に都心の真ん中の新たな土地をなぜ提供しようとしたのかは解明されなければならない。新たに選ばれる議員の方々にお願いしたいことだ。

事実の捏造も平和を破壊する

 キューバと米国が国交を回復し相互に大使館を開くという。54年ぶりだそうだ。オバマ大統領は、議会に対し、キューバへの経済制裁解除を訴えたという。今後は、共和党が多数を占める米国議会での議論が焦点となるという。「日米の和解と希望の同盟としたい」と訴えた安倍首相の米国議会演説の価値を正しく評価するためには、米国の歴史を知る必要がある。
  よくに12月8日の真珠湾攻撃による日米開戦とともに、「リメンバー・ザ・パールハーバー」という言葉を聞くが、「リメンバー・ザ・メイン」という言葉を聞いたことのある日本人は少ないのではないか。1898年2月、キューバ独立運動を支援するために、ハバナ港に停泊していた米国海軍の新鋭戦艦メイン号が謎の爆発を起こし354人の乗組員のうち266人がなくなった事件である。
 米国は、当初冷静だったと言われるが、新聞が国民感情に火をつけた。スペインが仕掛けた水雷による爆沈だとして決めつけスペインとの開戦を主張し、部数拡大のために事実の裏付けのない記事を載せていたのが、ハースト系のジャーナル紙とピューリッツァーのワールド紙だった。ピューリッツァー賞のピューリッツァーである。そして米西戦争が起こり、キューバプエルトリコの支配権を手に入れ、グアムとフィリピンを手に入れたその過程で、ハワイを併合したのである。「言論の自由」も大事だが、「事実の捏造も平和を破壊する」のである。そしてキューバの独立派は、新興大国に裏切られたのだった。
 それから半世紀がたち、1952年、25才の青年弁護士だったカストロが、米国の支持を背景にクーデタで成立したバティスタ政権を社会保安法違反で告発し、それに裁判所が応えないことがわかって、武力で政権打倒を決意したところからキューバ革命が始まった。バティスタは米国に亡命し、1959年1月カストロハバナ入城でキューバ革命はなり、米国もこれを承認した。キューバと米国の関係が破綻した切っ掛けとなったのが、4か月後の農地改革法だった。大農園、大企業から土地を買い上げ、耕す者に土地を与えた。大部分が米国企業の土地だった。米国は報復としてキューバの砂糖を買わないと脅しをかけたが、そこに割って入ったのが当時のソ連だった。砂糖を大量に買い付けると共に、ソ連さんの原油を安価に販売した。米国系の精製会社に石油精製を頼むと米国政府が拒否させた。これに対抗してキューバ政府が米国企業を国有化し、米国が経済制裁をし、1961年1月国交断絶したのだった。
 ラムをコカ・コーラで割った「クーバ・リブレ」(自由キューバ)やダイキリは知っていたが、モヒートは最近まで知らなかった。でも飲むならストレートが良い。

やはり沖縄本島2紙は偏っている。頑張れ八重山日報

 6月24日の八重山日報の金波銀波の記事は興味深かった。糸満市で開かれた沖縄全戦没者追悼式で朗読された翁長知事の「平和宣言」に、懸念を感じた八重山住民も多かったはずだという。翁長知事が宣言で、政府に米軍普天間飛行場辺野古移設中止を要求し、会場からは、翁長知事に対しては拍手、安倍首相に対してはヤジが飛び、さながら政治集会だった。これも県の「平和宣言」が発端だ。こんな騒然とした追悼式で、果たして御霊は安らかでいられるだろうかと批判している。八重山で開かれた追悼式は対象的だった。参列者はあらゆる政治的対立を超え、静かな雰囲気で戦争の悲惨さを語り、平和への思いに心を一つにした。・・・「反基地」の最も過激な主張が、そのまま県民の声として発信されているような現状では、県民の1人として不安を感じずにはいられないという。
 自民党内で開かれた勉強会での自民党議員の不規則発言を機にメディアは一斉に安倍首相を非難している。言論弾圧はとんでもないことだが、やはり沖縄本島の2紙は偏っていることは事実だと思う。朝日新聞毎日新聞東京新聞より左で、中国に共感を感じているのかという論調だ。中国から見れば、真面な新聞ということになる。ただ八重山諸島沖縄本島では全く異なる政治風土がある。
 沖縄の政治は複雑で興味深く、数年前から、東チモールや韓国の政治と比較しながら勉強をしている。何故、東チモールと比較するのかというと、東チモールポルトガルの香料貿易の拠点だったし、沖縄は中国との朝貢貿易の拠点だったという経済条件が似ていること。そして江戸時代の琉球王朝の統治と東チモールの植民地時代の統治似ているからである。東チモールは第二次大戦後、人種系統が近いインドネシアに組み入れられたが、海底資源が発見されるとヨーロッパとオーストラリアの人たちが騒ぎだし、支配階層のポルトガル系の混血をリーダーとした独立派が独立運動を起こし、それにノーベル賞が与えられ、結局は独立したという歴史がある。最近になって、「沖縄独立」という文字がネットで踊るようになった。沖縄の有力者には中国の福建省出身者の血をひく方が多い。前の仲井間知事も稲嶺知事もそうだった。自民党の国会議員を出している大手のゼネコンの国場組も帰化人系である。帰化人系の人にも中国に警戒的な人も入れば、べったりの人もいる。中国の領土であり属国であることを示す龍柱が建設されている那覇市は中国の影響力が強いといっても良いだろう。翁長知事は昨年まで、この那覇市の市長だった。
 何故韓国と比較するのかというと、江戸時代の本州の識字率は70%前後だとされるのに対し、韓国も沖縄も識字率は10%前後だと言われているからだ。沖縄では、琉球貴族とシナとの朝貢貿易に従事する帰化人だけが字の読み書きができた。韓国で字が読めたのは両班階級だけだった。明治の初めの琉球処分で、琉球王朝の貴族は東京に移住させられた結果、沖縄で字が書けるのが帰化系の人だけになった。明治の官選知事にとって沖縄の行政は苦労の種だった。教育の重要性に理解がないので、小学校への就学率がなかなか上がらなかった。新聞を発行しても読める人が少ないので、殖産興業に関する技術知識もなかなか広まらなかった。
 第二次大戦の終盤で沖縄は直接戦場となり大変苦労をした。そして戦後は長く米国軍政下に置かれた。戦前は確か島根県と同じ人口の60万人程度の地域だったはずだが、島根県がそれから大きく人口を減らしたのに対し、沖縄は現在140万人の人口となっている。戦後の米軍による米国流の医療と感染症対策の進展と、返還後の本土からの経済援助によって観光業が大きく進展したことが大きいと言われている。
 沖縄の経済を見ると、県民所得は低いが、高額所得者は比較的多い。県民所得が低いために、左派の勢力が強い。同時に、戦後も資産税の重課税や農地解放などが行われなかったために、明治時代から時の読み書きができ経済力郄い帰化系の人たち人たちが今も地元経済で有力であり、地元の大学教授や新聞社に勤める人もかなりの割合でそうした人たちの子孫だという。
 中国の習近平主席はもともと福建省で若い頃から台湾工作・沖縄工作を担当してきた人だいうし、尖閣諸島周辺には海底資源があるとされ、中国海軍は琉球弧にある米軍基地によって中国沿岸に閉じ込められていると感じているだろう。中国が沖縄を狙ってこない訳がないといった状況である。個人的には、東チモールの轍を踏まないように、安保法制の整備と共に、沖縄方面における自衛隊の拡充によって、抑止力を一層高めるべきだと考える。
 沖縄にご関心のある方は、沖縄本島の2紙だけでなく、八重山日報の記事をネットで読むことをお勧めしたい。ちょっと違った感覚の沖縄が見えてくる。

ルトワックの観方・憲法・歴史の転換点と変容

「中国の政治システムは、・・・日本への敵意を必要としている。仮に日本が尖閣を土産に差し出しても、・・・実は琉球がほしいと言うだろう。・・・もし日本が戦う姿勢を示さなければ、中国は益々圧力を強める」「(韓国の)憎しみの原因は、韓国が日本の植民地支配と戦わなかったからだ。だから戦った安重根を顕彰する。韓国の日本に対する態度は、日本が何をしようと関係ない」というのがルトワックの観方だ。
 国会の議論を聞いていると、安倍政権が世界の平和を乱しているかのように聞こえてくる。世界の現実を見れば、中国が問題なのは、はっきりしているし、韓国のエキセントリックさに米国も気がつき出した。国民の一人として野党の政治家に最も聞きたい議論は、ルトワックの観方を踏まえて、中国・韓国にどう対応するのかということだ。
 憲法憲法学者の議論は40年前、60年前とそう変わらないので、あまり興味がない。自衛隊ができた時点で、既に憲法解釈改憲もなされているし、基地を提供していること自体が、集団的自衛権の行使と考えるからだ。また選挙で選ばれた政治家による民主主義を信じるがゆえに、官僚内閣制の象徴である内閣の一部門である内閣法制局憲法解釈の優位を認めるべきではないと考える。
 昨日の静岡新聞の論説で、竹内宏さんが日韓基本条約から20年間の日韓関係を書いていた。興味深い指摘だ。長銀は、既に70年代後半に韓国経済における資本蓄積と中小企業育成の重要性を指摘していたという。その2点が今も韓国経済の病となっていることは明らかだ。そういえば、80年代の前半、日本経済研究センターにも韓国貿易会から研修生が来ていた。
 考えてみると、様々な分野・事象の歴史的な転換点が、ベルリンの壁の崩壊、天安門事件、日本のバブル崩壊と80年代後半に集中している。中国は天安門事件への対応として反日教育を始めた。韓国では、冷戦の崩壊と民主化運動の中で北の勢力が浸透を始めた。韓国が中国との国交回復をしたのもこの頃だった。そして戦後の日本人の中で、最も早く個人的に韓国フアンとなり、70年代に現代自動車の素晴らしさを讃え、家族ぐるみで韓国に通い、韓国語まで習得した作家の豊田有恒氏が、韓国の変容に警鐘を鳴らし出したのが90年代初めだった。

歴史的にみた翁長知事の位置づけ

 沖縄の琉球王朝の歴史は、ポルトガルの植民地だった東ティモールの歴史と似ている。東ティモールは香料貿易の拠点だった。沖縄は、中国にあった明朝と清朝との朝貢貿易に熱心だった。普通の人々は、長い間、着の身着のままで人頭税や塩税で収奪され、隣村との交流さえ禁じられていた。文字は人口の1割の支配階級に独占された。
 東ティモールではポルトガル人とその混血が支配階級である。沖縄では琉球王朝一族と朝貢貿易に従事した中国系帰化人のグループだった。明治維新となって琉球王朝一族が東京に居を移されると、本が読め、字が書けたのは中国系帰化人のグループだけだった。
 東ティモールからポルトガルが引上げると、多くの住民と人種的には同じ系統のインドネシア政府が面倒を見ることとなり、学校をつくり道路をつくった。
 ところが東ティモール海域で石油が出ると、同じ白人の血が流れているということで「インドネシアの圧政」を口実に、欧州が騒ぎ出した。尖閣諸島も資源が出ると中国が騒ぎ出した。そのうちに東ティモールでは内戦が始まり、ボルトガル混血派が率いる独立派にノーベル平和賞が贈られ、インドネシアは国際的な通貨危機の際に東ティモールの統治を放棄させられ、東ティモールは独立した。
 しかし石油という地下資源があるにもかかわらず、今もってその政権は経済的に自立しておらず、国連機関を通じた資金援助を訴えている。
 さて翁長知事はこれから沖縄をどうするつもりなのだろうか。

朝鮮半島の意味 

 昨年の9月に、ローマ法王様が「第三次世界大戦が起きている」とおっしゃったことがずっと気にかかっている。欧州では「世界大戦」と言うと、第一次世界大戦のことだそうだ。昨年は世界大戦100年ということで、今月半ばに東京で講演されるオックスフォードのマーガレット・マクミラン教授の“The War that Ended Peace: How Europe Abandoned Peace for the First World War (2013)”が欧米では随分話題となった。

 講演では、第一次世界大戦直前の複雑で多くの問題を抱えていた世界情勢に目を向け、現在の状況との類似点を指摘するという。欧米での本の販促も兼ねた講演会の後で、彼女は何をおいても現在の東アジアの危険性に言及されるのが常だと聞いている。

 しかし東アジア地域に限って言うと、日清戦争の前段である1882年の壬午事変(*)や1886年の長崎清国水兵事件と似た事件が眼の前で起きているような気がしている。壬午事変の後、李鴻章などの清国政府首脳は程度の差はあるものの「沖縄回復を名目とする日本征討、または日本征討を前提とする海軍力の増強」を主張していた。そして清国の威嚇に対して軍備が出来ていない日本は、外交上の妥協策をとる一方で軍備の拡張を進めた。
  (*)朝鮮で事大党と朝鮮の近代化を目指す独立党が争って閔妃一族の政府高官や、日本人の軍事顧問、日本公使館員らが殺害され、日本公使館が襲撃を受けた事件
 慰安婦問題や拉致問題で大活躍の西岡力教授は尊敬すべき半島ウォッチャーの一人でもある。その彼が3月19日の大阪の講演会で「韓国では1980年代に北朝鮮による民族主義が浸透し、反日反米の“従北派”が増え続けていると指摘し、独裁政権北朝鮮と、従北派が伸長する韓国のどちらが先に体制崩壊するかというほど緊迫した状況になっている」と言い、韓国を支援すべきと提言している。
 今、韓国からのしつこいまでの反日宣伝攻勢の中で、改めて、朝鮮半島の日本にとっての意味が問われだしている。

時論 2015年3月

1.川崎の事件
 川崎市川崎区の河川敷での残酷な中学1年生殺害事件で地検は18歳の少年を殺人で、2人の17歳の少年を傷害致死で家裁に送致した。
 事件からもうすぐ一ヶ月経つが現場には今も花束が絶えないという。地域の人にとって、この事件がとても他人事とは思えないのだろう。
 川崎市川崎区はJR川崎駅、市役所、川崎大師があり、今は駅前の再開発が進んだ華やかな街だが、市役所の裏手には全国有数の大歓楽街があり、海側の大工業地帯との間には、背の低い労働者の住宅が密集しコリアンタウンもあるという不思議な街だ。主犯の青年の母親はフィリピンの人だというが、父親の背景は明らかにされていない。1947年には密造酒の取り締まりで神奈川税務署員殉職事件がおきた地域でもある。
 評論家は慎重に対応し地域性を論じないため、違和感を感じる。地域の議会や政治の反応が比較的早いのは彼らもそれが根の深い問題であることを自覚しているからだろう。外国人労働者と移民の問題をもっときっちり、国会で議論してほしい。
2.中国・韓国の反日攻勢と安倍首相の米国議会演説
 米国メリーランド州の州上院は3月半ばに日本の戦時中の慰安婦問題を非難する決議を全会一致で採択し、下院でも同様の内容の決議案が審議されているという。昨年11月に当選した知事の再婚された奥方は韓国系の移民で、名前だけからすると在日の方かも知れない。州議会では中国系の議員がその条例を主導しているようだ。移住・帰化した人の人数と年間7000億ドルとも1億ドルともいわれる中国の反日工作資金も効いているのだろう。
 ワシントンDCは連邦に土地が譲渡されるまでは、メリーランド州の一部だった。そのためワシントンDC近くの、メリーランド州べセスダにはワシントンンで働く高級公務員が多く住んでいる。海軍病院、軍の情報組織に加えて、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)がある。NIHには常時200〜250人の日本人医師や製薬会社からの研究者が赴任し600人といわれる日本人コミュニティーもある。ただ人数だけでいったら、中国系・韓国系にははるかに及ばない。
 日本としては、キチンとした反論を急ぐべきだろう。その意味では、安倍首相の訪米時の米国議会での演説が注目されている。中国・韓国は、演説できないように最大限の運動をしてきた。そして演説することになっても、その内容を様々な手段で制約を加えようとしている。事実を事実として述べることが大切だ。ここで首相が反論しなければ、反論しないことをよって彼らの議論の正しさを裏打ちすることになってしまう。首相が反論すれば、少数の中国系や韓国系のジャーナリストによって捻じ曲げられた世界の議論を修正できる可能性がある。加えて、そうした勢力の存在、メカニズムにも言及すべきだろう。
 黄文雄先生によれば、中国人と韓国人が歴史を語りたがるのは、真実を知りたいからではない。フィクションやファンタジーを歴史にすりかえ、政治に利用しているためであるという。
3.シェールガス革命がなくなった米国経済の行方
 米国の直近のGDP確定値は前期比5.0%増であり非常に高い。雇用統計においても、11月の失業率は5.8%と前月と同水準だが、非農業部門の雇用者数が約32万人増と市場予想を大きく超えている。米国株式も好調だ。量的金融緩和で長期金利が低下し株価や住宅価格が上昇したことで、資産効果が大きく働いている。輸出の比率が小さいので、新興国の成長鈍化も大きな影響はない。原油価格の下落が消費を拡大しているという。
 果たしてそうだろうか。丁度ほど1年前はシェール革命が米国経済を転換させると言っていた。エネルギー価格の下落により、シェール関連企業は操業停止やはチャプター11になるところが多いのではないか。そうだとすれば米国経済復活のシナリオは消えたのではないだろうか。
 原油価格の指標、WTI(West Texas Intermediate)は、一時は140ドルまで上昇したが、最近では100ドルから50ドルを割り込むところまで下落した。たしかにロシア・イラン・ベネズエラなどの米国に敵対する産油国も苦しんでいるが、米国自身も産油国となるので経済が復活するというのが1年前の主張だった。原油価格の低下は、シェールガスの開発コストを割高にするため、シェールガスの開発・採掘は今後大きく減速する。
 消費拡大が米国経済の回復に寄与する場合には、米国の経常収支赤字が再び拡大する。今まで考えていた経常収支の黒字化をともなう経済成長という米国経済の構造変化とは大きく異なるのに誰も言及しない。そうした経済成長は、国際基軸通貨としてのドルの問題を拡大する。
4.国際基軸通貨をめぐる動き
 原油価格の落ち込みは、原油の需給だけでなくて、米国マネタリーベース残高の減少によっても発生していると考えられるのではないか。つまりFRBの金融政策が、正常化し利上げと超過準備の削減を加速していくことを反映している可能性がある。
 3月17日に中国主導で年内発足を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、フランス、ドイツ、イタリアも 参加することが報じられたた。英国に続き、欧州主要国が加盟で合意したことは、この投資銀に距離を置くよう働き掛けてきたオバマ米政権の「打撃」になると分析している。ドルに依存しない経済が拡大することは米国の覇権の足元を侵食する。オーストラリアと韓国もこれまでの姿勢を改め、参加を検討しているという。ヨーロッパは、ウクライナでロシアと必要以上に対決させようとしている米国に腹を立てているということもあるかもしれない。ウクライナが400-500億ドル、どうやって返すのだろうか。
 日本の菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行AIIBへの日本の関与に関し、従来申し合わせてきたように、公正なガバナンスの確立 ができるのか。持続可能性を無視した貸し付けを行うことで他の債権者に損害を与えることに結果的になるのではないか。参加には慎重な立場だしている。
 リーマンショック後の国際債券市場のユーロ債、ドル債は活況を呈した。しかしその発行主体は新興国の事業法人だった。これらの社債の価格が大きく下落し、デフォルトする可能性があるのではないか。新興国の事業法人で国際債券市場で資金調達をおこなうインセンティブがある企業を考えると、鉱山や油田関連の企業だった。こうした企業が破綻したり、社債のデフォルトがおこると、その社債を購入した金融機関の経営危機を招く。不動産バブルがはじけ、シャドーバンキングが破たんし、党内の対立は内戦一歩手前だと言われる中国にそれをファイナンスする実力はないのではないか。
5.中国の2015年の経済成長率は7.3%ではなく4.4%と予想される
 日本でも中国のGDP統計のいかがわしさは多くのエコノミストや経済学者が指摘し、産経の田村秀男氏は「電力消費量」と「鉄道貨物輸送量」から推測して、「マイナス成長」ではないかと主張されたいたが、英国の「ロンバート・ストリート研究所」のダイアナ・チョイレバ研究員は、中国の2015年第四四半期のGDPは1.7%下がっており、年間を通じて4.4%成長とみるのが妥当と発表した。中国の賃金があがり、世界の工場という魅力は急速に薄れ、外国企業ばかりか中国の企業が海外へ工場移転を進めており、GDP成長が5%を割り込めば、失業率も高まり、企業経営は苦境に陥るという。そうなれば人民元の為替レートは当然、下方修正されなければならない。